クナを聞く 第5回
ハイドン編その3 「オックスフォード」を聞く

1999/10/24

ハイドン
交響曲第92番ト長調「オックスフォード」
MONO90389
ベルリン国立歌劇場管弦楽団
(rec.1925)
PREISER/MONO90389(輸)

 幸い(^^)「オックスフォード」は、最近CD化されたPREISER盤だけだ。まさに、青天の霹靂のようにしてCDがPREISERから発売された。古色蒼然とした響きながら、クナ・ファンには若き日のクナの演奏が聴けるということでは、嬉しいプレゼントだ。なんせ、クナの37歳頃、バイエルン州立歌劇場の音楽監督になって3年後くらいの録音だ。おそらく、これより古い録音は残されていないと思う。

 「オックスフォード」には、コリン・デイヴィスの素晴らしい録音があるが、最近はピリオド楽器の演奏にかすみがちで、あまり話題にならないのは残念。
 ピリオド楽器でのハイドンの演奏しか認めない方は知らないが、もし、グランド・スタイルのハイドンも聞く方で、コリン・デイヴィスの演奏を知らない方は、ものすごい損失だと思う。デイヴィスのハイドンは、ロンドン・セットがまずリリースされ、そのあとに「オックスフォード」などが発売されたのだが、どの交響曲の録音も生命感に充ち、シンフォニックな魅力に富んだ録音だ。むろん各個の曲目には優れた演奏が存在するが、ことハイドンのまとまった録音となると、デイヴィスの録音は極めて優れていると思う。

 クナの1925年盤「オックスフォード」は、かびの生えたような非常に古くさい演奏・録音。残念ながら、その古くささを乗り越えて、他の最近の録音を凌駕する魅力には乏しい。クナ・マニアにはものすごく嬉しい録音の復刻だが、「オックスフォード」の、サード・チョイスにも入らない。
 1925年録音だもの仕方がない面はあるが、クナ・ファンにしか用のないCDだといえる。逆に、70年以上前の録音が、「オックスフォード」のファースト・チョイスだったら困るが(^^;;;;。
 ただ、非常に懐かしさを感じる録音で、別にクナ・ファンでなくても、当時の録音事情などを知るには、貴重な資料だといえる。

第1楽章
 ノイズの洪水の中から、かろうじて聞こえてくるような第1楽章序奏部。ここからクナの個性はすでに聞き取れる。特に第1ヴァイオリンのメロディの際だたせ方が魅力的で、17小節からのやさしく、聞かせている。これは、アレグロ・スピリトーソに入ってからも、メロディを自然に呼吸させている。ただ、メロディ主部以外は、蚊の鳴くような貧弱な音なので、その魅力を十全に聞き取るのは困難だ。特にチェロやコントラバスなどの中域から低域にかけては雰囲気くらいしか聞き取れないので、若き日のクナが描きたかったハイドンの交響曲世界は、残念ながら骨組みだけだ。
 ただ、スコアを見ながら聞いていると、これはこれで納得できる演奏ではある。以外と、第1楽章のテンポの動きは納得できる範囲で、録音のせいもあるし、オーケストラの奏法もあるのかレガートが思ったより少なく、隈取りがけっこう利いている演奏。

第2楽章
 この録音の魅力は、第2楽章に集約されているのかもしれない。その緩やかな楽章は極めて魅力的で、音の悪さを越えて情感が伝わってくる。おそらく、ふつうの演奏よりもテンポはかなり遅い。
 少しアゴーギグが大げさな箇所がないとはいえないが効果的。前半、シミジミとした情感は、音楽が止まるのではないかと思えるほど。40小節目のティンパニが加わるフォルテの箇所では(48小節からでは、リズムがスコアでは異なっているが、クナでは同じに聞こえる^^)、まるで無声映画のジンタのリズムのようで、「あ〜、ふる〜い!」という感は拭えない。静かな部分ではまずまず聞けるが、フォルテでは現代の聞き手は相当に我慢をしなければならない部分か。
 第2楽章では、木管楽器が活躍するが、今聞くと違和感はあるが、なかなか立派(^^)。

第3楽章
 音楽の性質からか、あまり違和感はない・・・というか、第1楽章から順番に聞いてきて耳が慣れてしまったのかもしれない。
 アイザンッツのそろっていないような冒頭から、ゆったりしたテンポのメヌエット。第1主題は2度繰り返されるが、出だしで少し表情が異なり、アインザッツが強調される。
 トリオは、どこか田園風景の自然描写のような趣だが、なかなか魅力に富んでいる。
 トリオが終わって、もう一度第1主題が再現されるが、ここでも出だしがさらに強調されている。

第4楽章
 「パンパカパンパンパン」と、調子がよい。録音のせいもあり、軽めに聞こえる録音。調子よく進行してゆくので、第3楽章と同じく違和感は少ない。ここから、それ以上のものを聞き取るのは難しいが、トスカニーニの録音のような、凄まじい推進力というのとは異なる。ここではクナはまだ、トスカニーニの推進力の代わりになるものを獲得できてはいない。


 総じて、第1ヴァイオリンの個性的な表情づけ、木訥ともいえる木管楽器の響きに、後年のクナの片鱗は聞こえるものの、骨董品的な録音の域は出ないだろう。
 これは、クナマニア、歴史的録音マニア向けのCDだろう。間違っても、このCDからクナの本質を聞きたいと思わないこと(^^;;;;。
 しかし、のどかともいえる響きに、一瞬、スコアから立ち上るゆたかで質朴とした香りを感じ取れるのも事実だ。
参    考
410 390-2
コリン・デイヴィス指揮
コンセルトヘボゥ管弦楽団、アムステルダム
(rec.1983/1)

PHILIPS/410 390-2(輸)


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