クナを聞く 第9回
モーツァルト編その3 交響曲第41番『ジュピター』を聞く

1999/11/28
1999/12/12 Update

モーツァルト
交響曲第41番ハ長調 K.551『ジュピター』
MONO90951
CD-897
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
(rec.1941/11/9)

PREISER/MONO90951(輸)
MUSIC & ARTS/CD-897(輸)2CDs


 案外、名演に出会えないのが『ジュピター』だ。特に第1楽章が難しいのか、『これだ!』という演奏にはなかなか出くわさない。

 と、書いたら、おまえは重要な録音を忘れているぞと、Kna-parc MLでご指摘があった(^^)。そうあの疾風怒濤の録音、シューリヒトのザルツブルク・フェスティバル1960年8月14日のライヴ(EMI/CDM 7 64904 2)。参考にジャケットもアップしておきました(^^;;;;。

 小生のフェバリッツはコリン・デイヴィスの演奏か(PHILIPS/410 046-2)。このデイヴィス盤は一風変わった演奏で、長めの残響の中、ゆっくり目のさまざまなフレーズのあちこち影を宿したような演奏で、空を飛ぶような『ジュピター』ではないのだが、やわらかな響き共々印象に残っている。あと、テンシュテットのライヴがブートレグのCD−Rで出たが(TIENTO/CD-12002)、力のこもった『ジュピター』で、同曲のイメージそのままの演奏だった。アーノンクールの最初の録音(TELDEC)も刺激的で面白かったが、繰り返しをきちんと守っているため幾分長尺で、そんなに何回も聞きたいとは思わない。
 演奏によっては、変に力みかえってしまったり、力不足であったりと、なかなか満足させてもらえない楽曲ではある。
 ひつとだけ、こいつは凄い!と唸って、数年前(いつのことかもう忘れている^^;)バリバリでも取り上げたことがあるのが、シューリヒト指揮ウィーン・フィルのザルツブルク・フェスティバルのライヴ録音。こいつは凄い!今聞き返しているが、第1楽章からのテンポも尋常ではなく、まるで楽曲が生きているように呼吸している。最終楽章まで、まさに息をもつかせぬとはこのことだ。音楽が生きていて、さらに高貴さを失わない。まさに、超絶的名演である。

 クナ盤は、第40番と同じ日の放送用録音とある。お世辞にも聞きやすい音ではない。そこで、第40番と同様、低域をブーストして、高域を落として聞いた。これでも低域は不足なのだが、ストレートに聞くよりはずいぶんましだ。第40番よりも、多少は聞きやすい。
 面白いのは、クレンペラー盤(EMI)の第1楽章がなんだかオペラの序曲のようだったが、クナはしっかり『交響曲』としてのフォルムを崩していない点か。

第1楽章
 クナ盤のテンポは幾分早めだ。38小節からの、上昇音型によるまさに天に昇るような楽句はさらにテンポを速めている。89小節から同じメロディが出てくるが、さらにテンポを速めて効果を上げている。
 101小節から、またゆったりとしたテンポに戻る。217小節から、音の欠落があるため、バラバラに聞こえる箇所はあるが、それはごく小さな傷だ。
 また、1小節目からモットーのようにして響く、16分音符の3連符と4分音符の太鼓を叩いているような、あるいは鞭を振り上げているような楽句は、クナは恫喝的に響かせており、軟弱になってしまう演奏が多い中で、的を射ている。
 空を飛ぶような『ジュピター』第1楽章とは多少ニュアンスが異なる。
 しかし、テンポは速いが、重心の低い重量級の演奏ではある。

第2楽章
 クナによるモーツァルトを聞いてきて『あ、これはクナだな』と思える演奏。あちこちで弦がうねっており、貧弱な音ながら『おお!』てなクレッシェンドが聞ける。
 ゆったりとしたテンポで始まり、6小節当たりでリタルダンド、11小節のえぐるような低弦の登場はなるほどクナだなと思う。19小節から1小節おきに第1音目に低弦のアクセントがつくのだが、確かにスコアでもそうなっているが、この響きの抉り方はなるほどクナだ。27小節でまたまた凄いリタルダンド。35小節からの豊かな情感も素敵だが、37小節からのクレッシェンドはなかなか強烈だ。47小節から、まだ低弦の第1音にアクセントがつく。
 71小節からのうねりは、まるでワーグナーのようだ。83小節と84小節のポルタメントは、ウィーンフィルのお里が知れたような(^^;。
 この第2楽章は、出色の面白さだった。演奏としては、クナの戦時中のバッハの演奏を彷彿とさせる美しさに充ちている。クナ後年の演奏の呼吸の深さを感じさせる。

第3楽章
 緩やかなワルツのようで、そのゆったりした感覚はたまらなく、クナのものだ。テンポはあちこちで収縮するが、鬼面人を驚かすような演奏ではない。ウィーンフィルも17小節からのスラーが美しい。このゆったりした感触はクナファンにはたまらない魅力だ。
 トリオは、モーツァルトのトリオにしては、異色だろう。メヌエットから断絶することなく進行する。

第4楽章
 音がダンゴになり、テンポも出だし速く、ちょっと違和感があるが、36小節から全音符で演奏される第1ヴァイオリンのポルタメント気味のスラーから、この演奏はその魅力を発揮する。  ただし、残念ながらこの楽章は弦4部がしっかり分離する録音でないと、十分な効果は得られない。174からのフーガはまさに、そのような演奏効果を生みだしているのだが、モコモコしたモノラル録音ではその魅力は全く伝わらない言っても、過言ではないと思う。
 クナの演奏は、録音の不備はあるものの、クレンペラー盤のような、並はずれたスケールの大きさはないが、非常にしっかりとこの楽章を聞かせてくれる。魅力に富んだ旋律の歌わせ方で、弛緩することなく進行する。ただ、420小節から最後まで、多少唐突な感じがないでもない。


 第39番から第41番『ジュピター』まで聞いてみて、第39番は録音が恐ろしく古いのでクナの演奏の魅力はなかなか伝わりにくいとは思うが、この『ジュピター』はなかなか面白かった。
 第40番が、規範のような演奏だったため、クナファンとしてはちょっと物足りなさを感じたが、『ジュピター』は音の悪さを越えて、クナらしさが漂う演奏であり、特に第2楽章や第3楽章に納得した次第(^^;。
参    考
CDH 7 64904 2
カール・シューリヒト指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
(rec.1960/8/14 LIVE)

EMI/CDH 7 64904 2(輸)
モーツァルト
交響曲第38番ニ長調 K.604『プラハ』
ヴァイオリン協奏曲第3番ト長調 K.216
ウィリー・ボスコフスキー(vn)


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