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TAHRA/TAH 320-322(輸)3CDs
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このCDが出るまで、まさかクナの『アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク』が聞けるとは思わなかった。吉田光司氏の『Hans Knappertsbusch Discography』を見ても、このCDが初出だったようだ。 マトリックス番号は、『EA 58991 à 58916』となっており、このあとに収録されているバッハとは録音方式が異なるようだ。バッハは『e Magnetphonkonzert』となっている。 音は、その録音年代を考えると、驚異的に聞きやすい。先に取り上げた第39番から第41番までの交響曲の録音がウソみたいだ。演奏の真偽は、第4楽章を聞けば分かるが、こういう演奏をするのは、おそらくクナだけだろう。 第1楽章から第3楽章まで、EMIのフルトヴェングラー盤と聞き比べてみると分かるが、そこまでは、おおまかなところで、当時の演奏様式を敷衍しているようだ。ところが、クナは何をどう思ったのか、通常の倍のテンポの遅さで、第4楽章を演奏させてしまう。 Kna-parcにご投稿いただいたグラーネさんによると、 『ボスコフスキー率いるカルテットがクナの住むミュンヘンでコンサートを開いた。開演前、彼はボスコフスキーの楽屋を訪ねた。演目の中にアイネ・・・がありクナは、「君、僕のゆっくりしたテンポを知っているだろう?そのテンポでやってくれなかったら笛を吹いてやる。」とポケットから呼び子笛を出してボスコフスキーに見せた。ボスコフスキーは特別ゆったりしたテンポで弾き終わった時客席からクナが舞台へ上がりボスコフスキーに抱きついて喜んだ。というものです。』 とあるので、クナはそのテンポに確信を持っていたのだろう。 クナのテンポは、晩年にいたるまで、すべての楽曲で遅いわけではない。ところが、こういうとんでもない演奏があるものだから、『クナのテンポは遅い』と言う印象になってしまうのは、仕方がないことか。
第1楽章 56小節まで、クナ盤では省略がなく、繰りかえされている。 出だし、クナ盤の方が重く感じられるが、フルトヴェングラー盤と比べると、その実そんなにテンポは変わらない。14小節目からクナの面目躍如である極端なディミュニエントがあり、見得を切るのかと思ったら、割と自然に次の楽句につながってゆく。51小節と52小節の第2音目にアクセントがつく(124、125小節でも同じ)。 43小節から、46小節までの第1音のバスパートや、繰り返し後の60小節からもバスパートにアクセントが付けられており、独特の味わい。 総じて、この楽章でのクナのテンポは遅すぎると言うことはない。ただ、通常聞けないような所にアクセントがついたり、バスパートが強調されたりで、フルトヴェングラー盤が横の自然な流れを意識した演奏なら、クナ盤は各フレーズの表情付けが濃厚。 23小節目の2回目の繰り返しのところで、クナのものらしい咳が聞こえる。
第3楽章
第4楽章 クナの『アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク』は、どなたか評論家の方が別のクナの録音で(チャイコフスキー『くるみ割り人形』だったと記憶している)『牛刀をもって鶏頭を切る』と評されたことがあったが、まさにその通りの演奏。 クナは、この曲が好きだったのだと思う。そうでないと、ここまで微に入り、細に入った、クナならではのアクセントとアゴーギグが聞ける演奏はしないだろう。 これは、クナファンにとって、交響曲の演奏では残念ながら聞くことができなかった、クナのモーツァルト演奏の特徴ある演奏記録として、是非盤と言えると思う。 |