クナを聞く 第99回
ワーグナー編その8−17 「パルジファル」断片

Parsifal...Hans Grahl
Gurnemanz...Herbert Alsen
Kundry...Anny Konetzni
Klingsor...Hermann Wiedemann
1.Blumenmädchen(1.Gruppe)...Luise Helletsgruber
2.Blumenmädchen(1.Gruppe)...Elisabeth Rutgers
3.Blumenmädchen(1.Gruppe)...Maria Schober
1.Blumenmädchen(2.Gruppe)...Esther Réthy
2.Blumenmädchen(2.Gruppe)...Dora Komarek
3.Blumenmädchen(2.Gruppe)...Dora With
Chor und Orchester der Wiener Staatsoper
(rec.1939/4/6 L)
- Vorspiel zum 1.Aufzug
- "Nun achte wohl und laß mich seh'n" - "Zum letzten Liebesmahle"
- Vorspiel zum 2,Aufzug - "Die Zeit ist da"
- "Wie lachen ihm die Rosen der Wangen" -
"Hier!Hier war das Tusen" - "ihr schönen kinder" - "Und willst Du uns nicht schelten" - "Komm,komm,holder Knabe"
- "...sie beut dir heut'als Muttersegens letzten Gruß" -
"Amfortas!Die Wunde" - "Hilfe!Hilfe!Herbei!"
- Vorspiel zum 3.Aufzug
- "Du siehst,das ist nicht so"
- "Ich sah sie welken,die einst mir lachten"
- Verwandlungsmusik -
"Geleiten wir im bergenden Schrein" - "Höchsten Helles Wunder"
koch Schwann/Edition Wiener Staatsoper Live vol.2/3-1452-2(Austria)2CDs
第1幕への前奏曲。哀しいかな収録したメディアの関係から、前奏曲全曲はリニアには聞けず、4分ほどで分断される。前奏曲では2度ほど分断される。クナの「パルジファル」前奏曲としては、ドラマティックに悲劇味を充分引き出した演奏になっている。1942年録音の演奏記録と比較してみても、さらにテンポは遅く、タイミングでは12分10秒となっているが、分断された部分を含めると、かなり長い前奏曲だ。質朴な祈りの部分とクライマックスの落差が大きく、身を切られるような痛々しさが全面に出ている。後年の全曲ライヴでは聞けないアゴーギグが頻発する。
2曲目は、第一幕場面転換の最後辺り、グルネマンツの"Nun achte wohl und laß mich seh'n(さあ、よく気をつけて、わしに見せてくれ)"から、聖杯騎士たちの合唱までが収録されている。合唱の声はチャチだが、行進曲のリズムやテンポがよく、かなり納得できる。グルネマンツのヘルベルト・アルゼンはこれだけ聞いてもよく分からない(^^;。途中でしゃっくりのような分断が一箇所入る。
3曲目、第二幕への前奏曲の途中から、クリングゾルの"Die Zeit ist da(時がきた)"からクンドリを起こしにかかり、"Dein Meister ruft:herauf!(ご主人さまがお呼びだぞ、出てこい!)"までが収録されている。恐ろしく早くてドラマティックな前奏曲が聴ける。さらに凄いのがクリングゾルを歌うヘルマン・ヴィーデマンだ。貧弱な音の中から、ヴィーデマンの悪役ぶりが聞き取れる。相当に迫力があり、熱いクリングゾルを聞かせてくれる。
4曲目、クリングゾルが城壁からパルジファルと堕落した騎士たちの戦いを嘲笑するように見つめている場面。パルジファルが圧倒的な強さで勝利を収め、クリングゾルが"Wie lachen ihm die Rosen der Wangen(頬のバラ色もいかにもうれしげだ)"から、花の乙女たちの登場、そしてパルジファルの"Ihr schönen Kinder(よう、きれいな娘っこたち)"のセリフの途中までが収録されている。ヴィーデマンのクリングゾルは相変わらずの迫力で、花の乙女たちの歌唱も時代がかってはいるが、かなり立派で切迫するような迫力がある。
5曲目、花の乙女たちの輪舞から、第2群の乙女たちの"Und willst Du uns nicht schelten(あたしたちを、とがめないのなら)"から第二幕のハイライトの夢見るような花の乙女たちによるコーラス、パルジファルの「おまえたち、なんていい匂いなんだろう」から、花の乙女たちの"Kannst du uns nicht lieben und minnen(あなたがあたしたちに、愛や情けをかけてくれないと)"の途中までが収録されている。花の乙女たちがソロになる箇所での見事な歌唱は聞き物だ。そして、クナの適切なテンポ!時代がかっていて古くさいのかと思いきや、思いのほか見事な花の乙女たちの場面だった。
6曲目、クンドリがパルジファルを誘惑し、接吻する場面"...sie beut dir heut'als Muttersegens letzten Gruß(その愛が今日、あんたにささげるものは、お母さんの祝福の、最初の挨拶としての、この愛の、最初の口づけよ)"から、その口づけによってアンフォルタスの苦しみの源泉を頓悟するパルジファルの「アンフォルタス!」の叫び、そして、"Es starrt der Blick dumpf auf das Heilgefäß:das heil'ge Blut erglüht(まなざしがぼんやりと、救いの聖杯を見つめる。すると神聖な血が灼熱してくる)"の途中までが収録されている。アニー・コネツィニのクンドリは、誘惑の場面がほとんどないため、その歌唱がどうだったのか分からないが、深々とした声は実に魅力的だ。その上で、美しいクンドリの艶姿を彷彿とさせる。ハンス・グラールのパルジファルも、個々に収録されている箇所は短いながら、見事に感情移入した歌を聞かせる。パルジファルが聖杯を幻視する場面の管弦楽の素晴らしく沈み込んでゆく様子や、その管弦楽に乗るグラールの歌唱とも素晴らしく、アンフォルタスの苦しみから聖杯へと導かれるドラマを描いてゆく。聞き惚れてしまった。
7曲目、パルジファルの誘惑に失敗したクンドリの"Hilfe!Hilfe!Herbei!(助けて、助けて、早く来て)"とクリングゾルを呼ぶセリフから、パルジファルがクリングゾルの城を瓦解させる第二幕終幕までが収録されている。アニー・コネツィニの歌声は、叫びの中にも気品があり、姉妹であったヒルデ・コネツィニともにウィーンで人気があったことが理解できる。クリングゾルの再登場と、印を切るパルジファルのセリフはゆっくりとかなりの迫力を持ったテンポだ。クリングゾルの城の瓦解は、安物怪獣映画の音楽のようだが、"wo du mich wiederfinden kannst!(どこでおまえがおれに再会できるかは!)"は余韻を持って歌われる。
8曲目、第三幕への前奏曲。悲痛で突き刺すような前奏曲だ。中間部で哀しみと諦観を聞くことができ、さらに救済への期待が高まるものの、泥沼のような哀しみに戻ってゆく。クナはここでもドラマティックに第三幕への前奏曲を表現する。
9曲目、聖金曜日の音楽が静かに悦ばしげに響く中、グルネマンツの"Du siehst,das ist nicht so(ごらんのとおり、それは違います)"と、パルジファルの聖金曜日の誤解を解いてゆくセリフの最後までの場面が収録されている。ヘルベルト・アルゼンの歌唱は思いのほか若々しく、誠実なグルネマンツだ。クナのテンポはかなり引き延ばし、ゆったりと聖金曜日の場面を描いてゆくが、アルゼンはそのテンポでもなお余裕があり、生きとし生けるものの、慈愛に満ちた幸福な場面を適切に歌ってゆく。
10曲目、9曲目のグルネマンツのセリフのすぐ後のパルジファルのセリフ"Ich sah sie welken,die einst mir lachten(かつてわたしにほほえみかけた花たちも皆しおれてしまったが)"から、遠くで聞こえる葬送行進曲、第三幕の場面転換の音楽の最初の断片が収録されている。クンドリのすすり泣きと、それを慰めるパルジファルの背後の管弦楽の優しい響きは極めて美しい。
11曲目、第三幕の場面転換の音楽の続きから、第1の葬列、第2の葬列の応唱が終わり、第1の葬列の"Gott selbst einst beschirmte?(先代王を倒せしは誰ぞ)"までが収録されている。極めてゆっくりしたテンポで、重く粘りつくように葬送行進曲が奏でられる。これだけ感情移入された葬送行進曲はクナ晩年の全曲盤からは聞くことができない。合唱はその迫力を獲得できていないのは録音のせいもあり、仕方がないところだが、若い頃のクナの切実な表現が聞けるだけでも素晴らしい。
12曲目、第三幕の大団円、パルジファルの救済が行われた後の"Höchsten Helles Wunder(このうえない救いの奇跡よ)"から最後までが収録されている。最後の最後で、原音源の激しい劣化があり、ノイズにまみれて終結する。極めてゆっくりと、奇跡が遂行されたことへの歓喜が拡がってゆくようで、クナが確信を持ってとらえていた「パルジファル」像が見事に現出する。貧しい音の中から聞こえる救済の音楽のなんと感動的なことか!
この録音を聞き直す前、その音のひどさと大時代的な演奏にげんなりする自分を想像したのだが、案外な聞きやすさと見事な歌手達の歌唱、管弦楽の立派さで、何回も聞き直すことができた。録音年代やライヴ録音であるということを考えるなら、実に優れた復刻だった。

Parsifal...Max Lorenz
Amfortas...Paul Schöffler *
Gurnemanz...Siegmund Roth
Kundry...Helena Braun
Klingsor...Adolf Vogel
Chor und Orchester der Wiener Staatsoper
(rec.1942/11/10 L)
- "Nehmet hin mein Blut,nehmet hin mein Lieb"
- "Amfortas!Die Wunde!"
- "Erlöse!Heland!Herr der Huld!"- "Gelobter Held"
- "ich sah Ihn ...Ihn...und lachte!"
- "...nach dem ich jammernd schmachten sah" -
"Erl&uoml;sung,Frevlerin,biet'ich auch dir" - "Ich sah sie welken,die einst mir lachten"
とにかく、マックス・ロレンツとヘレナ・ブラウンの名唱が聞けるだけで相当に価値の高い復刻だ。
1曲目、第一幕から。聖杯の開帳を拒んでいたアンフォルタスはついにティトゥレルの声に負け、聖杯を開帳する。少年たちの"Nehmet hin mein Blut,nehmet hin mein Lieb(わが血を受けよ、わが肉を取れ)"からの神秘的な暗闇の中から聖杯が輝き出す場面が収録されている。ティトゥレルの遠い声での "Oh!Heilige!Wonne(おお、聖なる歓び)"を聞くことができる。・・・1939年盤に比べると音が生々しくなっている。ところが、マイクの側での話し声がけっこう入っていたり、ティトゥレルの歌声が極めて遠かったりで、膝録り録音か。ゆったりしたテンポの中で、聖杯の神秘的な輝きが描かれる。恐ろしく秘境的な音楽になっている。
2曲目、第二幕、クンドリの接吻に目覚めたパルジファルの"Amfortas!Die Wunde!(アンフォルタス!あの傷!)"から、"um das entweihte Heiligtum(けがされた宝物の嘆き声)"と"Erlöse,rette mich(罪に汚れたる手より)"の途中までが収録されている。何より、クナの沈み込むようなフレージングと、マックス・ロレンツの神々しい歌声が聞き物だ。
3曲目、2曲目と同じ場面、パルジファルの最後のセリフ"Erlöse!Heland!Herr der Huld!(ああ、救済者!救世主!、慈愛の父よ!)"から、クンドリの"Gelobter Held!(みんながほめそやす勇士のあなた)"を経て、パルジファルのクンドリの拒否、そしてクンドリの"Kenntest du den Fluch(そのために受けた呪いが)"と、その後のほんの少しの部分が収録されている。ヘレナ・ブラウンの「幼子のあなたが」は収録されていないが、凄い表現力と歌唱の確かさが聞ける。優れたクンドリだ。
4曲目、3曲目の続きで(録音メディアの関係で、ブツ切れになった部分をそのままCD化してあるようだ)、クンドリの"ich sah Ihn ...Ihn...und lachte!(この目で、いつかわたしは見たわ。そして笑ってやったの)"から、クンドリの泣けなくなってしまったことの告白、"nur eine Stunde mich dir vereinen(ほんのひとときでも、あなたと一緒にいてもらいたいの)"の途中までが収録されている。救世主の死を見て、それを笑ったという、恐るべき情景の追憶が目の前に浮かぶようだ。クナはその恐ろしい場面を的確に描き出し、ブラウンの優れた感情移入の歌唱が聞ける。「パルジファル」で、最も悲劇的な場面かも知れない。
5曲目、第二幕の同一場面が続く。パルジファルの"...nach dem ich jammernd schmachten sah(ひとびとが嘆き悲しみながら思いを焦がしている泉は)"の途中から、パルジファルの拒否、クンドリの"und des Weges sollst du geleitet sein!(そうしたら例の道だって、あたし、案内してあげるわ)"までが収録されている。ただ、この後のパルジファルのセリフ"Vergeh'munseliges Weib!(消え失せろ、不吉な女め!)"からは、レオポルト・ライヒヴァイン指揮の別の日の収録のはずなのだが、かなりうまくつながっていて区別できない。その後も、レオポルト・ライヒヴァインの指揮した部分が続くが、ライヒヴァインの音楽はレガートの嵐だ。それにテンポがクナよりも必要以上に遅く、音楽が間延びしてしまっている。クナの1942年当時は、そのようなレガートの嵐からは脱却していたはずだし、テンポは遅い箇所があっても、歌手達は歌いにくそうではない。聞き比べてみて納得ができる。身びいきか(^^;。ただ、このCDのように続けて聞いていると、恐らくブラインドでは区別できないだろう。ロレンツの歌声の神々しさと迫力は聞く者に大きな説得力をもたらす。ブラウンも立派だ。当時のワーグナー歌手達のもの凄さをうかがい知ることができる。
クナの指揮した部分の6曲目、聖金曜日の音楽の最も感動的な部分、パルジファルの"Ich sah sie welken,die einst mir lachten(かつてわたしにほほえみかけた花たちも皆しおれてしまったが)"から、"du weinest - sieh!es lacht die Aue(お前は泣いているが、見よ、野は微笑んでいるぞ)"までが収録されている。クナの管弦楽も、レガートというより、ポルタメントがかなりかかっているな(^^;;;;。でも、身びいきで聞いていると、音楽の呼吸感というか、伸縮がライヒヴァインとは異なるようにも聞こえる(^^;。
ヘレナ・ブラウンのクンドリを全部聞いてみたかった気持ちになってしまうし、ロレンツのパルジファルも想像以上に素晴らしい。このような断片は残酷だ。全曲は残っていないものか・・・。第二幕だけでも・・・(^^;。

Gurnemanz...Herbert Alsen
Titurel...Nikolaus Zec
Amfortas...Fred Destal
Altstimme aus der Höhe...Elena Nikolaidi
Chor und Orchester der Wiener Staatsoper
(rec.1937/11/1 L)
- Verwandlung-
"Nun achte wohl" - "zum letzten Liebesmahle"
- "Nehmet hin mein Blut"
- "Wein und Blot des letzten Mahles"
- "Was stehst du noch da?"
- Verwandlungmusik
- "Es birgt den Helden der Trauerschrein" -
"Zum letzten male - Ja,wehe" - "Höchsten Heiles Wunder"
1曲目、第一幕、場面転換の音楽から、グルネマンツの"Nun achte wohl(さあ、よく気をつけてわしに見せてくれ)"、聖杯騎士達の合唱が収録されている。録音が思いのほかよく、アルゼンの朗々たるグルネマンツや管弦楽の立派さを聞くことができる。
2曲目、同じく第一幕聖杯城の広間、開帳された聖杯を讃える少年合唱の"Nehmet hin mein Blut(わが血を受けよ)"の前の聖杯の音楽から、ティトゥレルの感極まった"Wie hell grüßt uns heute der Herr!(主は、こんにち、なんとさやかに、我らに応えたもうたことか)"までが収録されている。本当に思いのほか音がいい。細部までよく聞き取れる。といっても、むろん周回ノイズは盛大だが。聖杯に当たる光が徐々に増し、神秘的な情景が感動を持って演奏される。ティトゥレルの歌声は残念ながらあまりよく聞こえないが。
3曲目、2曲目の直後の少年達の合唱"Wein und Blot des letzten Mahles(最後の聖餐のぶどう酒とパンとを)"からの少し前の聖杯の開帳の勝利から、歌声が青年達に受け継がれ、聖杯の騎士達の歓びの聖餐へとさらに受け継がれてゆく場面。第二の騎士達の合唱の途中までが収録されている。古い録音の常で、合唱はよく録れているとは言い難いが、その勝利への合唱は年代を考えると感慨深く聞こえてしまう。
4曲目、聖餐の儀式が終わりかけ、管弦楽が感動の余韻を残している箇所から、ボーっと突っ立っているだけのパルジファルにグルネマンツが"Was stehst du noch da?(なんだっておまえ、まだそこに突っ立っているんだ?)"とあきれて声をかける場面、そして、第一幕最後の合唱までが収録されている。グルネマンツを歌うアルゼンの歌声が見事だ。貫禄があり、朗々とした素晴らしい歌声を聞くことができる。クナのフレージングもゆったりしたテンポの中でメリハリを効かせ、第一幕最後の場面を的確に描いてゆく。
5曲目、第三幕の場面転換の音楽、重苦しい葬送行進曲が非痛感を伴って演奏される。ただ、録音があまりに古いため、それほど重苦しくは感じない。テンポが引き延ばされ、極めて意味深くドラマティックに演奏していることは分かる。
6曲目、場面転換の後の、落ちぶれた聖杯の騎士達によるアンフォルタスを徐々に非難してゆく合唱の部分、"Es birgt den Helden der Trauerschrein(哀しき柩は勇士を守り)"から、アンフォルタスが半身を起こし"Ja,Wehe!Wehe!Weh'über mich!(その通り、ああ、哀しくもつらいこの身の頭上に禍いあれ)"までが収録されている。後年の音が随分ましな録音に比べると、アンフォルタスをなじる合唱の迫力は雰囲気しか出ていない。それでも、アンフォルタスが歌い出すその雰囲気の落差はもの凄く、アンフォルタスの王としての威厳と優しさを、ここではまだ失わない。ほんの少ししか聞くことができないが、フレッド・ディスタルの歌声は立派だ。アンフォルタスの狂乱の場面がどんなんだったんだろう?と想像をたくましくさせるが、残念ながらその部分は収録されていない。
7曲目、第三幕の最終場面、平和が訪れ、救済の神秘が奏でられる辺りから、"Höchsten Heiles Wunder(このうえない救いの奇跡よ)"の合唱、そして第三幕の最後までが収録されている。オーケストラにアンサンブルの乱れがあるが、この場面での音楽ではあまり気にならない。素晴らしい「パルジファル」終幕の音楽が聞ける。
録音が古いからと侮れない。1937年の記録も、クナの感動的な「パルジファル」を知らしめてくれる。なかなかに素晴らしかった。

Amfortas...Hans Hotter
Chor und Orchester der Wiener Staatsoper
(rec.1942/11/10 L)
- "Wehvolles,Erbe"
- "(von neuen sprengt es das)Tor,daraus es nun strömt hervor"
- "Mein Vater!Hochgesegneter der Helden!"
- "Höchsten Heiles Wunder"
まだ、ハンス・ホッターが若い頃だから、初々しいアンフォルタスを期待したのだが、そこはやはりホッター、ヴォータンの嘆きのようなアンフォルタスだった。1909年生まれだから、1942年ではまだ33歳くらいだが、すでにこの貫禄と歌いっぷりなのだ。ホッターはアンフォルタスやグルネマンツには実は不向きだ、という以前に聞き惚れてしまうなにものかをホッターは既に持っている、といえる。
1曲目、第一幕、聖杯の騎士達やティトゥレルに聖杯の開帳を強要されるが、「待ってくれ!」とその心の苦しさを告白する場面"Wehvolles,Erbe(ああ、今さら逃れようもなく)"から、"des heiligsten Blutes Quiell fühl ich sich gießen in mein Herz(この上なく神聖な血の泉が、わしの心臓のなかへ流れ込んでくる思いがするのだ)"までが収録されている。マイクの位置からホッターは遠いように聞こえるので、1942年の録音はやはり膝録りだろう。それにしても、ホッターの歌いっぷりは凄いものがある。特に、"Oh,strafe,Strafe ohnegleichen(ああ、罰だ、たぐいない罰だ)"から、神の元におもむきたいと死を望む歌詞が歌われるのだが、その管弦楽ともどもの寂寥感と哀愁はたまらなく切実だ。クナは、恐ろしくテンポを落とし、アンフォルタスの苦しみと哀しみの落差を強調するが、ホッターはそのようなクナのフレージングとテンポにしっかりと乗ってゆく。恐ろしく、感情移入された歌を聞くことができる。最後の方で、マイクが拾った客席の声がやかましい。
2曲目、1曲目の続きで"(von neuen sprengt es das)Tor,daraus es nun strömt hervor(この逆流の血は、せきとめる門をも毎回新たに突破しては)"から、少年達と青年達の合唱を経て、聖杯の騎士達による"harre getrist(どうか安んじてお待ちになって)"までが収録されている。管弦楽、アンフォルタスの歌声が激情を伴って荒れ狂い、最後は死を望む沈み込んだ悲痛なアンフォルタスの場面だが、これはまったく凄いとしか言いようがない。アンフォルタスの激情から、死を願う哀しみの落差!クナとホッターのテンポは、聞き手を否が応でもアンフォルタスの見ている地獄を感じ取ることができるだろう。これはもう名唱以上だ。あまりにも凄すぎる!少年と青年合唱による"Durch Mitlied wissend(共に悩みて悟りゆく)"の合唱が、アンフォルタスの苦しみを同情するように、やわらげようと精一杯の努力をしているかのように聞こえる。これは、「パルジファル」第一幕の本質的な部分だろう。
3曲目、第三幕、"Mein Vater!Hochgesegneter der Helden!(おお、父上!勇士の中でも、ひときわけだかく祝福された勇士)"から、"Erlöser,gib meinem Sohne Ruh'!(「救世主よ、わが息子に安らぎを与えたまえ」と) "までが収録されている。うねりまくるクナによる管弦楽も凄いが、その管弦楽の渦の中で屹立するかのように、ホッターは切々と、死への願望を歌う。恐ろしいほどのゆったりとしたテンポだ。おそらく、このテンポはクナのものではなく、ホッターの歌唱に触発されたテンポだ。そのテンポが最後まで持続する。しかも弛緩しない。凄まじい充実感を味わえるアンフォルタスの歌唱である。
4曲目、同じく第三幕から最後の場面、"Höchsten Heiles Wunder(このうえない救いの奇跡よ)"からの合唱と終幕まで。マイクの側で話している奴の声がよく聞こえてしまう。クナのテンポは、いったにどうなってしまったんだろうと思うくらいに、引き延ばされている。それなのに、合唱からは歌いにくさを感じることはなく、静謐さを感じるな終幕場面になっている。まるで、「パルジファル」の音楽そのものが奇跡のようだ。
この記録は凄い!クナマニアだけではなく、ホッター・ファンが聞いてもその凄さに唸るに違いない。ああ!この録音が聞けて良かった!

Vorspiel zum 1.Akt,Rehearsal
Münchener Philharmoniker
(rec.1962 ?)
Rare moth/RM 453-M(Pirate)
クナ独特のしゃがれ声でなにやらオーケストラに指示を与えている。ミュンヘン・フィルとのものなので、「パルジファル」全曲録音ではなく、Westminsterへの録音時のものだろう。クナはドイツ語とフランス語を交ぜながらリハーサルを進めてゆく。クナの言葉に、オーケストラは夢を見るようにそのフレージングが豊かになってゆく。クナの指示にオーボエが従わないらしく、クナの不機嫌な声が最後に聞こえる。
小生はドイツ語が分からないので、クナが何を言っているのか、訳出できなかった。どなたか、訳していただけないものだろうか?