クナを聞く 第131回
ヨハン・シュトラウスU世 1−4 1940年録音
1940 Wiener Philharmoniker
Leichtes Blut Polka Op.319
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Maestro Energico/205229(Italy)10CDs
Preiser/90116(Austria)
Preiser/90139(Austria)
Preiser/90236(Austria)
Tahra/TAH 358-261(France)4CDs
新星堂/SGR-8228(Japan)
Pizzikato Polka
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Preiser/90116(Austria)
Preiser/90139(Austria)
Preiser/90236(Austria)
Tahra/TAH 358-261(France)4CDs
新星堂/SGR-8228(Japan)
- ポルカ「浮気心」
- ピツィカート・ポルカ
- Classics da capo/171.914-2(Greece)
高音がきつく金属的とは言わないが、かなり辛い音である。時代を感じさせる音。なお、レーベル名は本当はTaNeaかも知れない。TaNeaのClassics da capoというシリーズか、Classics da capoのTaNeaというシリーズかも知れないが、よく分からなかった。ライナー・ノートは全てギリシャ語である。一時期、大手CDショップに入荷したが、その後まったく見ない。この、「ヨハン・シュトラウス」にはジョージ・セル指揮ウィーン・フィル(rec,1934)の4曲や、フルトヴェングラー指揮ベルリン・フィルの「コウモリ」序曲(rec.1937)、ブルーノ・ワルター、エーリッヒ・クライバー、クレメンス・クラウス、カール・ベームの1929年から1938年にかけての録音が収録されている。
- Maestro Energico/205229(Italy)10CDs
この10枚組廉価盤の音はなかなかよい。ただし、ノイズ・リダクションが効き過ぎかなとも思える。それでもCassics da capo盤の後では、安心して聞いていられる。少しピッチが高めか。
- Preiser/90116,/90139,90236(Austria)
SPからの復刻のためノイズは多いが、それでも邪魔になるほどではなく、細部までしっかりと聞くことができる。優れた復刻である。
- Tahra/TAH 358-261(France)4CDs
Preiser盤とほぼ同じである。
- 新星堂/SGR-8228(Japan)
川合四朗氏所蔵のSPから復刻された。ノイズは盛大ながらこのCDの音は実に素晴らしく、SPの情報量の多さを感じ取らせてくれる。音も明晰で深いところまでしっかりと復刻されている。これはなかなか素晴らしかった。Green DoorのSP復刻盤よりも随分と素晴らしい。改めて1枚のCDすべてを聞き直してみて、SPの状態にバラツキは感じるが、じつに良心的な復刻である。既に廃盤になっていると思うが、中古でも見つけられたら入手をお薦めする。ジャケットはイマイチだが・・・。
小生はこれまでの続きだから、網羅的に1928年から1940年の録音が収録してあるPreiser/90236をリファレンスにして聞くことにした。
1940年までのクナの歩みはというと、ミュンヘンの楽壇を追い出され、ドイツ国内で演奏活動を禁止されたクナはウィーンに向かわざるを得なかった。奥波一秀著「クナッパーツブッシュ 音楽と政治」(みすず書房刊)によると、クナのウィーンでの活動は一筋縄ではいかなかったらしい。ヒトラーはよほどクナを嫌っていたらしく、クナのウィーンでの活動を許可しなかったからで、1936年7月27日にゲッベルスから許可をもらっている。ミュンヘンでの解任劇が2月25日だから、約5ヶ月間すったもんだしている。だた、クナはウィーンでの活動の前に、屈辱的な手紙をベルリンの参事官に書き、ドイツ宣伝省から3月13日にはバルセロナでの客演許可を取り付けている(ただし、Hans Knappertsbusch Concert Registerでは、1936年にその記録はなく、いつのコンサートのことかは不明)。
以後、クナはウィーンでの活動を再開し、オーストリア国内でウィーン国立歌劇場とウィーン・フィルを頻繁に指揮した。ザルツブルク音楽祭にも登場している。
オーストリアがドイツに併合されるのは、1938年3月12日ドイツ軍のオーストリア進駐からだが、クナは徹底的にナチを嫌ったらしい。奥波一秀著「クナッパーツブッシュ 音楽と政治」(みすず書房刊)には、クナがナチを嫌った逸話がいろいろと収録されていて面白い。ナチのユダヤ人差別のため、ウィーンの音楽総監督の地位にあったブルーノ・ワルターはその地位を追われ、亡命を余儀なくされる。クナが追いだしたわけではない。クナはウィーン国立歌劇場の総監督になる。
前妻エレンとの間に生まれた一人娘アニータを病気で亡くすのもこの頃で、1938年6月2日だ。エレンとは1926年に離婚、マリオンと再婚しているが、アニータは可愛がったらしい。クナは一人娘の死に大きなショックを受ける。
バイエルン州を除くドイツ国内で演奏活動が許可されたのは、1938年12月2日ベルリン・フィルとのコンサートからである。奥波氏によれば、ドイツ国内での演奏許可の経緯は分からないのだそうだ。
うがった見方をすれば、1934年11月25日の朝刊に載ったフルトヴェングラーの記事に端を発した「ヒンデミット事件」以来も、フルトヴェングラーはドイツの広告塔の役割を果たしていたものの、ナチはフルトヴェングラーを信用し切れていない面があったのではないかと思える。むしろ、フルトヴェングラーとゲッベルスの確執はユダヤ人問題よりも、楽壇の主導権争いのような節がなくはない。フルトヴェングラーにばかり頼っていられないナチは、他にも有力な指揮者が必要になる。ドイツ国内でのクナの人気は高かった。1940年まで、クナの活動の中心はウィーンとその周辺だったが、徐々にベルリン・フィルへの客演が増え、ナチの占領地域への演奏活動に、クナは本格的に担ぎ出されることになる。当時のクナの演奏活動の記録を見ると、ウィーンとベルリン、そして占領地域やドイツ国内での演奏旅行など、まさに獅子奮迅、よくぞこれだけのコンサートをこなせたものだと驚いてしまう。異常な時代の異常な活動内容だ。
「浮気心」、「ピツィカート・ポルカ」は「1940年夏」の収録とだけ、さまざまなCDの録音記録には書いてあるが、その1940年のクナの演奏活動の記録を見てみると、7月13日から27日までザルツブルク音楽祭に参加、8月の演奏会記録はなく、9月7日からベルリン・フィルとともに占領地域の演奏旅行に向かっている。「夏」がいつを指すのか分からないが、8月のことであったのかも知れない。
「浮気心」という題名に関して、新星堂/SGR-8228のライナー・ノートを書かれた宇野功芳氏は、「日本名は「浮気心」だが、原名は「軽快な気分」、転じて「ウィーンっ子気質」というべきものだ」と書かれている。日本コロンビア版「ウィンナ・ワルツ大全集」の保柳 健氏も同じ事を書かれていて、なぜ日本で「浮気心」になったのか分からない。もしかしたら、大昔、浅草オペラ辺りで「浮気心」という題名で演奏され、日本で定着してしまったのかも知れない。・・・と思っていたら、「ウィーン気質」はヨハン・シュトラウスの未完のオペレッタの題名で、アドルフ・ミュラーが補筆完成させたのだそうだ。ヨハン・シュトラウスの古いワルツやポルカがふんだんに使われていたのだそうで、その中にポルカ「浮気心」という題名が見える。もしかすると、「浮気心」は「浮気心」のままが正しく、「ウィーン気質」はそれらワルツやポルカが登場するオペレッタの題名であったのかも知れない。詳しくは音楽よもやま話の、ウィーン気質(かたぎ)よもやま話を参照のこと。実際に浮気してしまうと「軽快な気分」どころではなくなるが、実際に浮気する前、浮気心がもたげてくる頃は、楽しくウキウキした気分なのかも知れない。まあ、実際はどうなのか小生にはよく分からない(^^;。
速いテンポの楽曲だが、クナとウィーン・フィルの演奏はどこか余裕を持っているかのように響く。その上で、表情付けが明確で楽しい。あまり下品にならず、ウキウキした音楽を楽しむことができる。クレメンス・クラウスの1929年録音も聞いてみたが、疾走するようなクラウスの音楽に比べて、クナの演奏は幾分おっとりと響く。
「ピツィカート・ポルカ」はヨハンとヨゼフ兄弟の最後の合作で、ヨゼフやエドゥアルトが自身の作品で活躍が本格化し、ヨハンとの仲に徐々に溝が生まれてゆく課程で生まれた作品なのだそうだ。音楽を聞いていて、そんなことはどうでも良くなるくらいに、ピツィカートだけで優しく、また快活に演奏される。クナとウィーン・フィルは同曲の規範のような音楽を聞かせてくれる。各フレーズの性格が明確で、その上、短い音楽ながら愛情がこもり、親密な音楽を聞くことができる。試しに、Tahra/TAH358-361に収録されているフェレンツ・フィリッチャイ指揮ベルリン・フィル(録音不詳)の演奏を聞いてみる。フレージングの違いで、やはり楽曲の聞こえ方がかなり異なる。フリッチャイの演奏も素敵だが、クナの演奏の優しさは実に美しく、また柔らかみを感じさせる。素敵な夢見るような瞬間をクナの演奏から感じ取ることができた。






